原稿の作り方
※2012/10現在 ・2012/12ちょっと更新(進捗表、ペンについてなど)
※アナログ道具に関しては参考までにリンクを繋げていますが、該当各社とは特に関係ありません。購入を強制するものでもありません。
※主にPhotoshop5.5での本文原稿の作り方に重点を置いて説明しています。
  表紙に関しては印刷所さんのサイトやpixivの講座なども参考にしてください。


【環境:デジタル】
◆OS> Windows7
◆ソフト> Photoshop CS3(主に表紙加工) Photoshop5.5(主に本文原稿) ペイントツールSAI(主に表紙カラー全般)
◆ペンタブ> ワコムCTE-640
◆スキャナ・プリンター> エプソン804AW(複合機)


【アナログ】
▽使用画材たち


◆原稿用紙> IC(アイシー)135kg同人誌用(紙のサイズがA4のもの)
 →書き味がいい、インクがにじまない。個人的にはウラオモテ両面使うので分厚い方がいいのですが110kgでも十分描きやすいです。
◆下書き用シャーペン> ぺんてるTUFF0.5
◆シャー芯> 黒はB(こだわり無し)、ラフ用にオレンジ芯と水色芯
 →とても描きやすいシャーペン、10年以上これです。芯を3色使ってるので、胴体にテープを貼って見分けてます。
◆消しゴム> Radar とカドケシ
 →広範囲はRadar。カドケシはネームの細かい部分を直すのに使ってます。

ペン入れ道具は本によって変えています。
今までの忍たまジャンルの同人誌でいうと以下の通り。
◆「あおいはる」「ゴイタケサンピー」など> Gペン
◆「ラブサンド」「ラブミックス」> 新ペン先
◆「きみをすきでよかった」> ハイテック
◆「はじめてのきもち」> 細かい所は新ペン先、太いところはGペン
※「わかげのいたり」はシャーペンでペン入れしたものを補正していました。が、これはトーン作業が時間かかって結局効率よくないという結論に至りました…
 今のところ新ペン先とGペン使い分けるのが一番理想的な線が引けます。

それぞれの善し悪しは以下の通り。
ハイテック> ○練習がいらない、速い ×強弱が付かない
 →黒の0.3〜0.5芯を3本入りコレトに装着して使うとペンを持ち替える手間がなく速いです。
新ペン先> ○インクつける手間が要らない、先が割れにくく長持ち ×若干ひっかかりがある
 →カートリッジ交換で長く使えますが、これのみで原稿してると累計80〜100枚くらいでペン先がへたれて太くなってきます。その際は本体ごと買い換えします。
◆つけペン> ○漫画っぽい強弱のある線が一発で出る ×インクつけるのが面倒、慣れるまで難しい
 →個人的にはニッコーのGペンが描きやすいです。
  軸はタチカワのフリーペン軸が使いやすいです。
  インクは証券用がよいらしいです。伸びが悪くてすぐかすれるなーという時は少しだけ水で薄めます(スポイト使用がおすすめ)。

  ↓ちなみに、インク瓶そのままだとペン軸にインクがついちゃうのでインク入れ自作しました。


その他、少し太めの線が欲しいときや細かいベタをあらかじめ塗っておくために以下のようなものも使用。(広いベタはデジタルでバケツ塗りしちゃいます)
ポスターカラー極細(黒) 
筆ペン(手汗でにじまない顔料インクがベター)
◆修正ペン> コープ修正液極細が最高に使いやすかったです。乾きやすくて上にインクが乗りやすければ何でもOK。
◆定規> 格子が入ってる透明のものが使いやすいです。

※こういった画材は文具店・通販のほか、夏コミ・冬コミやCOMIC CITY会場でも購入することができます。


【原稿方法:表紙】
だいたいフルデジタルです。
B5またはA5、解像度350dpi、CMYKの原稿を作ってます。
塗り足し(印刷されないけど一応描いておく部分)は上下左右3mmつけてますが、使用する印刷所さんの指定に従ってください。

SAI(RGBモード)でラフ→線画→塗り
Photoshop CS3で背景との合成や文字入れ、CMYK変換を行います。
最終作業はPhotoshop CS3です。文字加工の多彩さでフォトショはCS3を使ってます。

線画をアナログで行う場合もあります。「きみをすきでよかった」ではシャーペンの線画をスキャンして塗りました。

※↑の絵の背景は、自分で撮影した写真をトレースして線画として使いました。(だいぶずらしたり違う建物を描き込んだりしていますが)
 ネット上の写真や素材画像を同人誌に使う場合使用規定を熟読し、遵守する必要があります。
 よく分からなかったら、自分で撮るのが一番安全です(その場合も企業のロゴや被写体に注意が必要ですが、詳しくは調べてみてください)。


【原稿方法:本文】
私は下書き・ペン入れまではアナログ、トーン・セリフなど仕上げはデジタルです。
ただし枠線をデジタルで描いていたり、消しゴムかけの工程を省くために途中でスキャン・フォトショ作業を挟むなど変則です。
600dpi、モノクロの原稿を作るための方法を以下で説明します。


【下書き】
原稿用紙ウラ面(白いA4コピー用紙でもOK)を使い、1枚に2ページ分を描きます。1ページ分はA5サイズになります。
準備として、中央と両端1cmずつくらいに計3本のアタリ線を入れます。ボールペンとかでOK。
これはスキャンの時に紙のはじっこが見切れてしまいやすいのと、本になったときノド部分は描いちゃいけないのでサイズ調整のためです。
(ノド=本の内側、綴じ部分のこと)


私はネームでほぼ画面構成を決めてる方なので、あとはネームの通りにがしがし描くのみ。
▽ちなみにネームはこんなかんじ


▽下書きが終わるとこんなかんじです。

きみどり色の線> 枠線の位置のラフ
赤っぽい線> オレンジ色のシャー芯で描いたラフ線 です。分かりやすいよう少し彩度いじりました。
線画は黒のシャーペンです。

枠線はフォトショでしっかり入れるので、下書き時点ではボールペン線1本のみ。
その代わりセリフや擬音はできるだけ入れておきます。


【スキャン・枠線】
下書きをスキャンして枠線を入れて淡色で印刷する工程です。
スキャナ設定:イメージタイプ>「8bitグレー」、解像度>「600」dpi、
 調整>濃度補正「コントラストを強く」、イメージ調整>明るさ・コントラスト共に「10」
 アンシャープマスクにチェック
※エプソンだと「プロフェッショナルモード」でスキャンすると色々いじれます。他社でも同じようなことができるはず。

▽上記設定でスキャンするとこうなります。(Photoshop5.5の画面)


回転して、線画をくっきりさせます。
線画くっきりの方法については下記のような方法があります。好みでどうぞ。
・明るさコントラストをいじる
・トーンカーブをS字になるようにいじる
・背景レイヤーを複製して上に乗ってるレイヤーを乗算にしてみる
・          〃           オーバーレイにしてみる

▽くっきり後はこんなかんじです。


これを1ページ分ずつ「原稿用紙ファイル」にコピーペーストします。

※原稿用紙ファイルとは。
▽自分の原稿方法に合わせた下図のようなファイルをA5/B5、左右ともに作ってあります。
 これはファイル名の通り、B5の本文600dpiの←左側ページ用です。


▽レイヤー説明
「外わく」> B5原寸ワクと上下左右+3mmのワク。原稿用紙ウラ面を使う時は真っ白なので、これでどこまで描けばいいか分かります。
「03 T」> ノンブル(ページ番号)のテキストファイルです。これはあとで打ち直します。
「l」> Lineの頭文字小文字。枠線レイヤーです。
また、青いほっそい線はガイドです。原寸と原稿用紙の「内枠」の大きさに合わせています。ノンブルの位置や枠線の目安に使います。

▽ということで、下書きの画像を…


先程の原稿用紙ファイルの、「l」レイヤーと「背景」レイヤーの間にペーストします。
「別名で保存」(Ctrl+Shift+S)でファイル名を「04.psd」などページ順にして保存し、ノンブルレイヤーもページ番号通りに打ち直します。

▽自由変形(Ctrl+T)して横幅を原寸内いっぱいまで拡大します。大体でいいです。
 ※シフトを押しながら四隅のどれかをドラッグすると等倍になります。


▽こうなります。


▽「l」レイヤーに黒で枠線を引きます。
 矩形選択ツール>塗りつぶし、やラインツール(アンチエイリアス切)を使用。


ラインツールの太さは、私は横:140ピクセル、縦:40ピクセルで引いてますが好みによって調整してください。
下書きレイヤーは矩形選択ツールで選択→右クリック「レイヤーをカット」で切り貼りしたり、必要に応じて縮小拡大してください。
下書きなのでわりと雑に扱っても大丈夫です。この時点でおかしい絵があったら左右反転してちょちょっと直したりもします。

▽枠線の「モト」完成(lレイヤー)


【1】描画色と背景色を初期設定(白黒)にしておいてから、
「l」レイヤーを「階調の反転」(Ctrl+I)すると…
▽真っ白になります。


【2】さらに「l」レイヤーを「編集」>「境界線を描く」(幅12ピクセル、外側、描画色、不透明度100%) すると
▽枠線が完成します!


※【1】〜【2】はアクションに登録してファンクションキー1つでできるようにしておくと作業効率UP。

上記のファイルを次のペン入れのために、淡色にして原稿用紙に印刷します。
▽「イメージ」>「モード」>「ダブルトーン(1版)」でカラー1色にモード変換。
 個人的にはM15・Y20の肌色っぽい色が好きです。このくらいの色ならモノクロでスキャンした時には白く飛びます。


そしてプリンターに原稿用紙をセットし、印刷します。
▽こんな感じに印刷されます


ちなみにこの後のデジタル作業はグレースケールで行うので、ダブルトーンで印刷したあとはモードをグレースケールに戻しておきます。


【ペン入れ】
あとは下書き通りにがしがしペン入れ。
フキダシを先に入れると作業しやすいかもしれません。
フキダシの線はハイテックなどインクが濃いめのものを選ぶとスキャン時に飛びません。

▽ペン入れ完成図


恥ずかしながら修正液もべたべた使ってます…
なお、セリフ・擬音はPCで入れるので、アナログでは入れません。


【スキャン】
再びスキャンします。
スキャナは下書きスキャン時の設定になっていると思いますが、そこを以下のように変更します。
イメージタイプ>モノクロ、解像度>600dpi、しきい値>「70」
※A5本の場合、原稿用紙原寸に描いたペン画を「82」%縮小でスキャンするとちょうどいいです。

モノクロ=白か黒かの2色しかない画像でスキャンされます。しきい値=白黒の判定の度合いです。
先程の下書きのオレンジ色は、白黒でいえば白の方に近いため、スキャンすると白になります。

▽しきい値比較画像


※しきい値は低いほど画像が明るく飛ぶ=線が細くなります。好みによって調整してください。
 この原稿はハイテックでペン入れした分、50くらいでシャープにしたかったのですが
 フキダシを色の薄いミリペンで描いたら、ぼろぼろに隙間が空いてしまったので泣く泣く70でやり直しました。
 フキダシに隙間があるとものすごい手間がかかるのです…


【セリフ・擬音入れ】
▽スキャンした画像を全選択(Ctrl+A)>コピー(Ctrl+C)して
 先程の枠線まで完成したファイルの枠線レイヤーと背景レイヤーの間へペースト(Ctrl+V)。


▽ペン画レイヤーをCtrlキーを押しつつドラッグして枠線に合わせます。
 「外わく」レイヤーは不要になるので削除します。
 ノンブルレイヤーは、新規レイヤーを作ってそこに統合します。
 このあと写植(セリフ)などテキストデータ用レイヤーにするため、レイヤー名は「t」とでもしておきます。


▽「レイヤー1」(ペン画レイヤー)の不透明度を50くらいに下げます。
 すると「背景」レイヤー(下書き)のセリフや擬音が見えるので、それを見ながらセリフを打ちます。
 個人的にレイヤー数が増えるのがきらいなので、セリフは打ったらどんどん「t」レイヤーに統合していきます。


※フォントのアンチエイリアスは「なし」の方が、モノクロ仕上げの場合、完成時ギザギザが出ず綺麗です。
※カナ部分が太めの明朝、漢字がゴシック体のいわゆる「漫画フォント」を使うと漫画っぽさが増します。
 漫画フォントは5年前くらいには完全フリーで自作できましたが今はどうなのかな…調べてみてください。

擬音は手書きします。
▽「t」レイヤーの上に新規レイヤーを作り、そこに描画色黒の鉛筆ツールで描きます。


枠線のときと同じく、反転→境界線を描く、の繰り返しで白抜きなどにします。
▽反転+境界線12ピクセル 縁取りなしの白抜き


▽↑を反転 縁取りありの黒字


▽↑に境界線 黒縁取りの黒字


▽↑を反転 縁取りありの白抜き


…てな感じで擬音にもバリエーションが出せます。その他、境界線の太さでも印象は変わります。
こちらもアクションに登録すると楽です。

▽テキストレイヤーが完成しました!


以降下書きレイヤーは不要になるので削除します。
私はペン画レイヤーの不透明度を100に戻し、「下のレイヤーに結合」(Ctrl+E)して背景レイヤーをつぶす形にしてしまいます。

「l」レイヤーの下に1つ新規レイヤーを作り、フキダシ目隠しをします。
(目隠し=このあとトーンなどを貼ったときフキダシに飛び出さないようにあらかじめフキダシを白くしておく作業)
このときテキストレイヤーはバケツ塗りつぶしの邪魔になるので非表示にしておきます。
▽フキダシ内を黒で塗りつぶし、色調反転(Ctrl+I)させるだけです。


▽こういう擬音の背景は色を変えてみたりします。


▽こういう、枠線にまたがったフキダシは


▽「l」レイヤーの上に新規レイヤーを作り、「l」レイヤーをいったん非表示にして(ペン画レイヤーだけ見える状態にして)
 フキダシの中を黒で塗りつぶします。


これを反転して境界線を描く(太さ6ピクセル程度)だけでOK。

※作業工程としては、ここまでである程度完成形が見えます。
 私はいつも仕上げが締切ギリギリになってしまうので、心の安定のために全ページこの工程を終わらせてからトーンに入ります。


【トーン】
あとはひたすらトーン作業です。

まずペン画レイヤーを乗算にします。
「すべて選択」(Ctrl+A)>切り取り(Ctrl+X)>貼り付け(Ctrl+V)して背景レイヤーから切り離し、レイヤーのスタイルを「乗算」に変えます。
レイヤー名は「メイン」とでもしておきます。
メインレイヤーと背景レイヤーの間にトーンを貼っていきます。

▽黒ベタ部分はバケツで塗りつぶすだけです。髪の毛には鉛筆ツールで薄いグレーの細いラインを入れると流れが出ます。
 ※「編集」>「描画色で塗りつぶし」と「編集」>「パターンで塗りつぶし」はアクション登録しておくと効率UP。


塗ったそばからどんどん「トーン」レイヤーに結合していきます。「下のレイヤーに結合」(Ctrl+E)を駆使します。

▽無地の部分もバケツ塗りです。


▽グラデーションにする場合は仮に塗ったレイヤー(下地レイヤー)の「透明部分を保護」してから、グラデーションツールを使います。


▽トーンを貼る場合は素材ファイルを開き、全て選択(Ctrl+A)→コピー(Ctrl+C)して…


▽下地レイヤーの真上にペースト(Ctrl+V)します。


▽「下のレイヤーとグループ化」(Ctrl+G)して、必要に応じて自由変形(Ctrl+T)で角度などを変えます。


その後「下のレイヤーに結合」(Ctrl+E)してトーンレイヤーに結合します。

▽肌の影などは鉛筆ツールとバケツ塗りを併用します。必要に応じてグラデーションをかけます。
 肌の基本影はモノクロ原稿の場合、K10%程度がちょうど良いと思います。(グレースケールの場合は印刷所さんにもよります)


トーンの動作は、以下の繰り返しです。
1.下地レイヤー(貼る範囲を見やすい適当なグレーでベタ塗り)
2.下地レイヤーの透明部分を保護
3.グラデをかけたり素材トーンを貼ったりパターンで塗りつぶしたり…
4.トーンレイヤーに結合

▽トーンは自分で作ったり、普段から商用可フリー素材を集めたりしています。
 以下はトーンフォルダの一例です。日本語ファイル名にしてイメージできるようにしてます。


▽トーン完成するとこんなかんじ。まだグレースケールです。


▽レイヤー別にみると…テキストレイヤー


▽枠線(+フキダシ)レイヤー


▽メイン(ペン画)レイヤー


▽トーンレイヤー


【モノクロ変換】
「イメージ」>「モード」>「モノクロ2階調」
「レイヤーを統合しますか?」と聞いてくるので「OK」

▽解像度「600」dpi、変換方式は「ハーフトーンスクリーン」


▽線数「60」「line/inch」、角度「45」°、網点形状「円」
 ※線数を上げると細かく少女漫画風、線数を下げると荒い少年漫画風になります。


▽「OK」を押すとこうなります。


▽拡大するとこんなかんじ。


ガイド(青い細いライン)が残っているので、「ビュー」>「ガイドを消去」で削除します。
※モノクロ変換→ガイドを消去の流れはアクションに登録しておくと効率UP。

▽完成!


「完成原稿」など別のフォルダを作ってそこに「別名で保存」します。

※トーン完成段階のグレースケールモードの画像も別で保存しておきます。
 モノクロ原稿は修正がしづらく、サイズ変換も苦手(モアレが出る)ため
 セリフ修正や再録本で画像サイズを変えるなどの作業はグレースケールモードでする必要があるからです。

▽実際のオフセット本はこんな感じです。


▽拡大





※蛇足ですが

ネームが終わってページ数が決まった時点で↓のような表を作り、進捗状況を常に把握しておくと
作業効率がよくなると思います。

この場合下書きができたら/線、ペン入れが終わったら赤で\線、トーンまで全て終わったら緑○、
その他仕上げ時に忘れちゃいけない箇所を赤文字で書き込んであります。



以上です。よい原稿を!


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